三河の田舎で郵便配達員をしていた八橋鳳一は不正を告発して配達員を辞めるが、学生時代の恩師から郵政省本省での仕事に誘われる。オフィス・パソコン・エリート…期待に胸を膨らませて郵政省のビルを訪れた彼を待っていたのは、予算青天井・採算度外視で一、郵政省の面子のために・二、採算度外視で手段を選ばず・三、民間よりも速く配達するための"郵政省郵務局特別配達課"の、一癖どころか二癖も三癖もあるような面々だった。パソコンやエリートとは無縁な額縁入りの現場仕事…夢と現実のギャップに唖然とした彼だったが、お子様でじゃじゃ馬な美女の上司「桜田 美鳥」の元、持ち前の反骨精神と悪知恵で日本全国津々浦々のさまざまな郵便物の配達に邁進する!
俺は良くできたバカ話は大好きで、そういう点からするとこの2冊はたいそう良くできていますが、それはひとまずさておいて、ツッコミどころもあちこちにちらほらと。読み始めるとすぐこんな記述が。
総じるに、美人である。プロポーションも、絶対的な数字は少ないが均整が取れている。縦方向に四分の五倍角をかければ、モデルで通るだろう。
縦にだけ5/4倍するとモデル体型っつーことは所謂「トランジスタグラマー」という体型なのではないかと思うんですが(それはそれで萌えるという声もあるかも知れないが)。あと、同じページにはこっそりガンダムネタもあったりして、あざといなぁとちょっと引いたり。
他には競馬の東京優駿(日本ダービー)に出走する馬のことを「ダービー馬」って呼んでたり(日本ダービーの優勝馬がダービー馬じゃないかな)、続編の「追伸 こちら特別配達課」では
さて、いよいよお話の内容について。この話を構成しているのは大体3つの要素だと思っといて構いません。
- 親方日の丸万歳
- 現場根性
- テクノロジー萌え
主人公たちは危篤の老人の最期の願いをかなえるために家一軒丸ごとを病院の前まで皇居の中を突っ切って(!)運んだり、特殊な伝染病のワクチンを運ぶために東京の大深度地下に敷設されたリニアモーターカーで突っ走ったり、月宛の手紙を月面に配達するためにH2ロケットに小包を便乗させたりという荒唐無稽の限りを尽くすわけで、こういうスケールのでかい馬鹿ができるのはジャパニーズ公務員ならではですが、同時に彼らは公務員であるが故に事勿れ主義の硬直した官僚機構にも悩まされます。そういう障壁を差出人と受取人のために、特配課の面々の持ち前の現場根性(と主人公の悪知恵)で突破していく痛快さがこの作品の醍醐味なんですが、こういう視点は他にはありません。作者の着眼点の巧みさが光ります。
そしてテクノロジーについては特配課が使用するコンバータプレーン・郵便新幹線・リニアモーターカー・スパコンなどの途方も無く充実した装備や、お話のネタであるH2ロケットや家の輸送(日本の土木技術は世界トップクラスだそうで)や伝染病対策などなどで熱く燃えることが出来ます。
「追伸」では主人公たちが民営化される郵政省でリストラの痛みに苦悩し、最後に「郵便配達」という縄張り意識を捨てて「配達」に生きがいを見出すという成長のドラマがあり、主人公と美鳥の恋愛があり、ライトノベルのツボはきっちりとソツなく抑えています。登場人物も魅力的ですし、まず1級品の出来でしょう。くどいようですが勢いで書いたような節があって(もともと作者はめちゃくちゃ筆が速い)粗が目立ちますが、根性が曲がってないとそんなの気が付かないし無問題ッスよね!
しかし「こちら郵政省特配課」は現在品切れ中で再版予定が未定なんだよなぁ(俺は近所のブックオフでセコハンを入手)。小川一水もだいぶ有名になったことだし、そろそろ重版かけません?>朝日ソノラマさん。
0 件のコメント:
コメントを投稿