機本伸司「神様のパズル」
ハルキ文庫版を買ってみたら、軟派な装丁やキャッチーな設定とは裏腹に中身はかなり熱いSFだった。道具立ても宇宙論だの粒子加速器だのインターネット分散コンピューティングだのと、玄人好みの渋いところを取りそろえている。クライマックスで主人公の吐くセリフは一見ダメダメでありながら非常にカッコイイ。
同「メシアの処方箋」
文庫になるのが待ちきれなくて購入した機本作品2作目。ひょんなことから発見された謎の古代遺跡。そこに記録されていた情報は人の遺伝子を組みかえるためのものだった。遺跡の調査に従事していた主人公は、生命倫理をぶっちぎって実際に遺伝子組み換え人間をつくるプロジェクトに巻き込まれてゆくが、実験の末生まれた子供は……という熱いトピックを扱った作品。
同「僕たちの終末」
ひょんなことから人類滅亡の危機が間近に迫っていることが判明した近未来、座して終わりを迎えるよりはダメもとで他星系に移民してしまおう!というプロジェクトに参加した人々を描いた群像劇。これまた好き心を刺激する作品で、移民宇宙船の設計思想や社会情勢などをがっちりと描写している。
これら3作に通底しているテーマは「私とは何か」という問いへの挑戦なのだが、あまり説教がましくなくきれいに話がまとまっている。観念的なSFが苦手な人も大丈夫。科学好きな俺には堪えられません。
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